読むだけでわかる数学再入門 微分・積分編

カバー
定価 ¥2,750(税込)
ページ数250
サイズA5
著者今井 博
発売インデックス出版
ISBN978-4-901092-84-5
カートに入れる試し読み正誤表演習解答

はじめにより

微分?,積分?,それって? 昔習ったという記憶しかない.なんだっけ? という読者,仕事や研究で微分や積分について必要になったが,どんな本で勉強したらよいかわからない,という読者のために,また,数学の授業でどうもよく意味が分からないという理工系の学生のために,懇切丁寧に,手取り足取り?,分かりやすく説明します.

さて,微分学や積分学は,主として,高校3年の理数系の学生が学ぶ数IIIという分野で詳しく教えられています.議論はあるでしょうけれど,大量の練習問題をやらされながらも,何のためにこんな式変形を習うのか分からないまま,単位をもらうために頑張った高校生がほとんどではないでしょうか.理学系・工学系の大学や学科に入っても,「難しいのだ!」という印象を植え付けるような数学の講義で,うんざりですよね.分かります.というか,実は,これが著者の体験です.そんな高校生や大学生,社会人に読んでもらいたいのです.いろいろ,苦労したから著者は書きたいと思ったのです.

本書は,本当に読むだけで良いのです.読むだけでわかるように,書いたつもりです.かと言って,低レベルではありません.レベルは,高校生の「数IIBか数IIIC」程度から大学1年(教養の必修)で習うあたりです.当然,本書1冊で,微分学・積分学の全ての分野を詳しく取り上げることは出来ませんし,する気もありませし,数学科を出ていない著者には数学の知識や能力に限界があります.ですから,本書では,基礎的な知識を中心にやさしく説明しようと思います.

この本の目的は,理学・工学で用いる数学の微分・積分法に関する基礎の習得です(ただし,複素関数論は含みません).本書はそのエッセンスを紹介します.もちろん,ある程度の数学を読む知識が必要になります.さらに,読んで分からない部分は調べる意欲が重要です.ここで,何故,英文字などを使うのかという疑問を持っている方に申し上げますと,それは,いろいろな数の代表を英文字で表すためです.コンピュータのプログラムは,定義部分の定数を除けば,全て英文字で代表させて書かれています.後から,必要に応じたケースごとの具体的な数字を英文字に代入すれば,プログラムで設定した方法で答えが簡単に得られます.ですから,考え方によっては,数学で,英文字を用いた数式を書くというのは,コンピュータの「サブルーチン」あるいは「関数」を書いているのと全く同じことなのです.

さて,一番大事なのは,最後まで読み切ることです.ここで「読む」とは,数式の流れを目で見て納得することです.例題は解答を見ないで解ける必要はありません.読むだけで理解できれば結構です.本書では,式の変形は,目で追えるように,できる限り省略しないようにしています.ふむふむと流れを追ってください.本書を読み,さらに詳しい数学へとステップアップして頂けたらと思います.計算で難しそうな場所は,キャラクターが注意点や説明不足を補ってくれます.さあ,皆さん! 早速,スモールワールドにはいっていきましょう!

目次

1 微分

  1. 微分とは
    1. 極限の定義
    2. 数列の極限
  2. 関数の微分の基礎
    1. 関数の極限の基礎
    2. 関数の微分の基礎
  3. 関数の微分
    1. 関数の微分
    2. 冪関数の微分
    3. 三角関数
    4. 対数関数と指数関数
    5. オイラー公式
    6. 微分公式のまとめ
  4. 偏微分
    1. 偏微分の意味
    2. 偏微分
    3. ナブラ
    4. 極大・極小
    5. 複素数の偏微分
  5. 全微分
    1. 全微分とは
    2. ラグランジュの公式と平均値の定理
  6. 線形代数における微分
    1. ベクトルを微分
    2. ベクトルで微分
    3. 行列で微分
    4. 最小二乗法
  7. 微分に関する補足
    1. 微分の表現方法
    2. 微分の別の見方

2 積分

  1. 積分とは
    1. 原始関数
    2. 積分の基本
    3. 積分定数
  2. 不定積分
    1. 不定積分とは
    2. 関数の不定積分-1
    3. 関数の不定積分-2
    4. 置換積分法
    5. 部分積分法
  3. 定積分
    1. 定積分とは
    2. 積分区間
    3. 線積分
    4. 二重積分
    5. デルタ関数
  4. グリーン関数
    1. グリーン関数とは
    2. 電磁気学での利用
    3. ポアソン方程式のグリーン関数
    4. 波数フーリエ変換とデルタ関数
    5. 波数領域のグリーン関数

3 微分方程式

  1. 一階微分方程式
    1. 一階線形微分方程式とは
    2. 一階微分方程式
    3. 等傾線
    4. 一階高次微分方程式
    5. 変数分離
    6. 同次一階線形微分方程式
    7. 非同次一階線形微分方程式
    8. 定数変化法
    9. 直交曲線
    10. ピカールの逐次近似法
    11. リカッチの微分方程式
    12. ベルヌーイの微分方程式
    13. クレローの微分方程式
    14. ストゥリュム・リュービル型微分方程式
  2. 二階線形微分方程式
    1. 二階線形微分方程式とは
    2. 二階線形微分方程式
    3. 特性方程式
    4. オイラーの微分方程式
    5. 他の微分方程式
  3. ナブラ
    1. ナブラとは
    2. ベクトルの発散・ガウスの定理
    3. ベクトルの回転・ストークスの定理
    4. ナブラの計算
  4. 偏微分方程式
    1. 偏微分方程式とは
    2. 偏微分方程式
    3. ラグランジェ法
    4. シャルピー法

4 応用

  1. 流体力学における分野
    1. トリチェリの法則の利用
    2. ハーゲン・ポアズイユ流
  2. 光・弾性波における分野
    1. フェルマーの最小時間の定理
    2. 弾性波波線
    3. ヘルムホルツ方程式・波動方程式
    4. 畳み込み積分
    5. デコンボリューション
    6. 自己相関関数・相互相関関数
  3. 電磁気学における分野
    1. 電磁波の基礎方程式
    2. 電磁波の伝播
    3. 電磁波の反射と場の直交性
    4. 電磁波の反射と透過
    5. 電磁波のエネルギー
    6. 電磁波速度の補正
  4. 力学・熱学の分野
    1. 質量,重心
    2. 慣性モーメント
    3. 一次元熱方程式
    4. 力学と波動論
  5. 幾何学の分野
    1. 直交曲線群
    2. パラボラ・アンテナの問題
    3. 球の表面積や体積
    4. 曲率半径
  6. スペクトルとフィルター
    1. スペクトルの概念
    2. 弦の振動
    3. フーリエ変換
    4. FFT
    5. フィルターオペレーション

5 数値解析法

  1. オイラー・コーシー法
  2. ニュートン法
  3. ルンゲ・クッタ法
    1. 2次のルンゲ・クッタ法
    2. 3次のルンゲ・クッタ法
    3. 4次のルンゲ・クッタ法
  4. FEMとBEM
  5. カルマン・フィルター