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我が子の自殺のサインを読み取る

カバー

定価 本体価格¥2,200+税
ページ数 232
サイズ B6
著者 ヘルガ・ケスラー・ハイデ
訳者 加納 教孝
監修 高橋 祥友
発売 インデックス出版
ISBNコード 4-901092-42-1
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はじめにより

《なぜ?》

子どもや青少年がみずからの命を絶つ、最初に私たちの心に浮かぶのはこの「なぜ?」という疑問だと思います。そして自殺を止められなかった自分を責める気持ち、不安、恐怖とともに、

《子どもや若者が、なぜもう生きていたくないなどと思うのだろう?》

《自分たちはあらゆる手をうったのか?》

《何を見落としていたのだろう?》

《どこの部分で力が及ばなかったのか?》

といった多くの疑問が浮かんできます。

私がこの本をもって向き合いたいと考えているのは、子どもを持つ親御さんたちをはじめとして幼稚園や学校の先生がた、社会教育にかかわっている方々、すなわち日常の生活や仕事の中で子どもや若者と接している方々です。

自殺傾向を示す挙動、つまり自殺の恐れのあるような行動を早い時期に読み取るために、あるいはまた私たち自身の中にある恐れであるとか、怒り、無理解といった気持ちにより良く対処するために、様々な提案やアイデアを差し上げることができればと考えています。その意味で、この本では自殺が起こってしまった後の悲しみや問題についてではなく、それ以前の出来事である自殺の傾向を示す言動について限定して述べてみようと思います。

1998年の統計によれば、ドイツ国内で自殺した未成年の男子の数は622名、女子が171名です。この数字を見る限りでは、男子のほうが女子よりも自殺者数が多い。ところが、実は自殺未遂の数でいいますと圧倒的に女子のほうが多いのです。女子というのは基本的に感情面をより強く表しますが、それに対してあまりにも注意が払われていません。ところが、問題はまさにそこに隠れているのです。ですから、私は少女たちがかかえる問題にもっと目を向けたいと思いますし、少女たちを取り巻く状況について、具体的に繰り返し示唆していきたいと思います。

自殺行動というのは、けっしてただひとつの原因によってのみ引き起こされるものではありません。本書では、そういう自殺行動の背景が持つ複雑さというものに光をあて、自殺を予防する上での様々な可能性を示そうと思います。

どのような経過で、若い人はもう死にたいと考えるようになるのでしょうか?

どのような問題が、絶望的で耐えられないもののように思えるのでしょうか?

彼らの中で何が起きているのでしょうか?

その背景には、どのような家庭状況があるのでしょうか?

このような様々な疑問とともに私が特に申し上げたいのは、多くの問題が世代を越えて続き、それが最終的に子どもや青少年の自殺行動でその終わりを迎えることがある、ということです。

このように、自殺未遂をめぐってはさまざまな視点と背景があります。その概要を第1章で紹介します。

自殺しようなどと思う子どもや青少年というのは、いま自分がかかえている様々な問題を乗り越えるための方法がわからない、あるいは持っていない、という危機的状況にいます。

そこに何か共通点のようなものはないのでしょうか?

自殺未遂の背景にはどのようなものがあるのでしょうか?

それらについてのさまざまな理論を紹介し、それぞれの異なる切り口について説明します。

自殺を防止する最善の方法は、早い時期に「警戒兆候(サイン)」に気づいてあげることです。様々な具体例をもとにそれについて詳細に述べたいと思います。

最初のサインから実際の行動までの移行段階を、専門的な言葉で「自殺前症候群(prasuizidale Syndrom)」と呼びます。この用語を初めて用いたのは、ウィーンの精神科医であり精神療法家でもあったエルヴィン・リンゲル(Erwin Ringel)でした。

この自殺前症候群の段階では、たとえば自分の殻に閉じこもるとか、極端に人見知りする、あるいは自分自身に対する攻撃性、自殺幻想など、自殺に先立つ様々な典型的精神状態が見られます。

自殺を企てるなどということは、何もないところやスッキリと晴れわたった空のような精神状態のところから急におこなわれるものではありません。通常、自殺をするような子どもや青少年というのは様々なサインを発します。それらのサインを読み取り、正しく理解することが大切なのです。

サインを発してから自殺行動までは非常に短いことがしばしばです。両者の間にあるさまざまな違いについて示したいと思います。その際には、子どもの自殺行動と青少年のそれとを区別しなければなりません。なぜならば、自殺未遂があれば、そこにはかならず対人関係障害(人間関係のトラブル)があります。子どもの場合、それに該当するのはまず家族ですが、青少年の場合には、本人にもっとも近しい友人関係も一緒に考慮の対象に入れなければならないからです。

いったいどのような要因が子どもや青少年をして、自殺以外に自分が生きてきた世界から抜け出す方法はないと考えさせてしまうのでしょうか?

家庭環境は子どもや青少年の成長に大きく影響しますので、続けてさらに、家庭環境に影響を与えるさまざまな要素ですとか、家庭環境の典型例にも言及します。

私はこの序文の最初で、なぜ子どもや青少年が(今のような状態のままでは)死にたいと考えるのか、という疑問を述べましたが、そのような子どもや青少年のほとんどが、みずからの人生の今後についてハッキリとした答えを持っています。すなわち、「今までと異なるように」というものです。ですから、第2章では自殺行動を防ぐために前段階で私たちができることは何か、いわゆる「予防(Pravention)」について、そしてまた「危機介入(Krisenintervention)」という形で今まさに自殺する恐れのある子どもにどう対処すべきかについて、そして最後に再発を予防するための「アフターケア(Postvention)」について詳細に述べていきたいと思います。

予防においては、子どもたちや青少年にとって「限度(Grenze)」というものがいかに大切であるかということを基本の考えとしなければなりません。それについて、本書の中で詳しく取り扱います。

私たちが自殺傾向のある子どもや青少年について話す場合、まず生徒や学生ということを念頭においています。ですから学校や成績、落ちこぼれといったことの持つ意味について、項目をさいてとり上げたいと思います。

さて、あらゆる努力にもかかわらず、子どもあるいは青少年が自殺を試みたとなると、そういう彼らを病院へ連れて行かねばなりません。

しかし、彼らが病院へ運ばれた後はいったいどのようなことが起きるのでしょうか?

家族が注意しなければならないことは何でしょう?

大人には、みずからの感受能力を強めるようにしていただきたい。そして自殺を試みた当人に対して打撃ではなく助言を与える、ということを学んでいただきたいと思います。自殺という世界のなかで、今まで以上に注意深くあっていただきたいし、恐れを抱くことなくそれと向き合っていけるようになっていただかねばなりません。

アフターケアと物事を変えることの必要性については、最後の「さまざまなセラピー」という項目のなかでとり上げたいと思います。

家族療法をおこなうセラピストは、家庭というものをひとつの組織、ある症状(この場合、自殺のことです)により阻害されうるひとつの人間関係の組織とみなしています。この自殺という症状は、家庭という全体的な組織と関連させることによってはじめて観察できるものですから、ともに家族療法をおこなうことは、ほとんどの場合、問題解決の糸口をさぐる上でとても役に立ちます。

また多くの事例では、家族療法に加えて個人精神療法も必要になるかもしれません。本書の最後に、それについてのいくつかの例をあげようと思います。
物事が目まぐるしく変化していくこの世の中においては、子どもを育てるということが以前とくらべてずっと難しくなっています。ですから、私はこの本を通じて子どもを持つ親御さんたちや教育関係者に少しでも援助の手をさしのべたいと思っています。子どもたちや青少年が示すサインを早い時期に読みとれるよう社会的な背景について述べています。そして自殺のサインを見落とさないというご自分の能力に信頼をおくようになっていただきたいと願っています。

目次

自殺行動についてのさまざまな視点と背景

  1. はじめに危機ありき
  2. 自殺前症候群とは
    • さまざまな閉塞感
    • 攻撃性の逆転
    • 自殺幻想
  3. 自殺についての理論
    • 社会学的アプローチ
    • ナルシシズム(自己愛)
    • 学習理論的・社会心理学的アプローチ
  4. 警戒兆候(サイン)について
    • 目立つ挙動
    • 話し方と外見
    • 心理面での変化
    • 身体的愁訴
    • 喪失体験
    • 実質的行動の段階
  5. 自殺行動について
    • 子どもの場合
    • 青少年の場合
  6. 家庭という名の組織
    • 暴力に支配された家庭
    • 片親(あるいは両親)がいない家庭
    • 「私たちには何も問題はありません」という家庭
    • 共依存的家庭

予防と援助

  1. 予防
    • 親という名の職業
    • 学校での自殺予防
  2. 危機介入
    • 危機への対応
    • 警戒兆候(サイン)への対応
    • 自殺行動への対処
  3. 再発予防(アフターケア)
    • 入院治療
    • 繰り返しの危険性
    • さまざまな援助団体
    • さまざまなセラピー
  4. 【解説】孤独な魂の叫びを受けとめるために 高橋祥友
    • いじめは自殺のすべての原因なのだろうか
    • 自殺に関する家族理論
      • 「取替えのきく子ども」論(サバース)
      • 「スケープゴート」論(リッチマン)
      • 「多世代間の家族の病理」論(フェファー)
    • 群発自殺
    • 自殺予防教育(カリフォルニア州の例)
      1. 生徒を直接対象とした教育
      2. 教師を対象とした教育
      3. 親を対象とした教育

【訳者あとがき】 加納教孝