トリトン流体力学 第2版

カバー
定価 ¥7,700(税込)
ページ数448
サイズA5
著者D. J. Tritton
河村 哲也【翻訳】
発売インデックス出版
ISBN978-4-910058-57-3
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訳者序文より

本書はD.J.トリトン著のPhysicalFluidDynamics第2版の全訳である.本書の最大の特徴はこの書名からもわかるように,流体力学を「物理的な」視点から解説したところにある.したがって,著者の序文にも書かれているが,数式が中心の数学的な流体力学の本や,取り扱う対象が応用に主眼がおかれた工学的な流体力学,流体工学の本とはかなり異なった本になっている.このことから,この訳本の書名も「物理的視点にたった流体力学」とするのがおそらく原著の趣旨に最もあっているが,書名としては長すぎるため,少しニュアンスは異なるかも知れないがあえて簡潔に「流体力学」とした.

本書の翻訳を思い立ったのは以下の3つの理由からである.第一に,上にも述べたように本書は通常の流体力学の本とはかなり異なったアプローチをとっていて,またそれが見事に成功しているからである.世の中に流体力学の本はあふれているが,類書はほとんどないと思われる.第二に,自分自身がもし流体力学の本を書けといわれても,このようなアプローチでは絶対に書くことができないからである.原著者の深い物理的な洞察に感心せざるを得ない.第三に,取り上げられた題材が,他の流体力学の本では詳しく取り扱われないものが多く含まれているからである.特に熱対流,成層流体や回転流体,不安定性などが非常に詳しくまた物理的に明快に著されている点も本書の魅力であると思われる.

本書とは,初版を訳者が大学院生のときに研究室で輪講したときに出会った.そのとき素晴らしい本であることがわかったが,怠慢な学生であったため一部を読んだだけで全部を読み通さなかった.その後,流体力学の数値計算法などに興味が移ったためにそのままこの本の存在を忘れていたが,現在の研究室の大学院生の輪講に使う本を探しているうちにこの本を思い出した.もう一度読んで見て,この本のすばらしさを再認識するとともに学生のころに全部読んでおけばその後の勉強や研究のために役立ったと思い後悔した.そして一人でも多くの人にこの本を読んでもらいたいと思った.これが本書を翻訳した,もうひとつの隠れた理由である.

目次

    1. はじめに
    2. 本書の範囲
    3. 記法と定義
  1. 管内流れと溝内流れ
    1. はじめに
    2. 層流理論: 溝内流れ
    3. 層流理論:管内流れ
    4. レイノルズ数
    5. 助走長さ
    6. 乱流遷移
    7. 流量と圧力勾配の関係
  2. 円柱まわりの流れ
    1. はじめに
    2. レイノルズ数
    3. 流れのパターン
    4. 抵抗
  3. 平行壁内での自由対流
    1. はじめに
    2. レイリー数とプラントル数
    3. 鉛直な隙間内の対流
    4. 水平層内の対流
    5. 表面張力の変動による対流
  4. 運動方程式
    1. はじめに
    2. 流体粒子と連続体力学
    3. オイラー座標とラグランジュ座標
    4. 連続の方程式
    5. 実質微分(ラグランジュ微分)
    6. ナビエ・ストークス方程式
    7. 境界条件
    8. 非圧縮性の条件
  5. 高度な基礎概念
    1. 流線,流管,パーティクルパス,流脈
    2. 円柱まわりの流れに対する比較
    3. 流れ関数
    4. 渦度
    5. 循環
    6. 渦度方程式
  6. 力学的相似性
    1. はじめに
    2. 力学的相似性の条件:レイノルズ数
    3. 従属量
    4. 他の支配無次元パラメータ
  7. 低レイノルズ数と高レイノルズ数
    1. レイノルズ数の物理的な重要性
    2. 低レイノルズ数
    3. 高レイノルズ数流れ
  8. 粘性流れの方程式のいくつかの解
    1. はじめに
    2. ポアズイユ流れ
    3. 回転クウェット流
    4. 球のまわりのストークス流
    5. 円柱まわりの低レイノルズ数流れ
  9. 非粘性流れ
    1. はじめに
    2. ケルビンの循環定理
    3. 非回転運動
    4. ベルヌーイの方程式
    5. 非粘性流中の抵抗(ダランベールのパラドックス)
    6. ベルヌーイの方程式の応用
    7. いくつかの定義
  10. 境界層,後流,噴流
    1. 高レイノルズ数流れにおける粘性領域
    2. 境界層近似
    3. 境界層の分類
    4. 圧力勾配がない場合の解
    5. 後流
    6. 噴流
    7. 粘性流中の運動量とエネルギー
  11. 剥離と付着
    1. 剥離現象
    2. 剥離の条件
    3. 低レイノルズ数の剥離
    4. 境界層剥離
    5. 高レイノルズ数流れに置かれたにぶい物体と流線形物体
    6. 付着と再付着
  12. 揚力
    1. はじめに
    2. 2次元翼
    3. 3次元翼
    4. 回転物体
  13. 対流
    1. はじめに
    2. 対流の方程式
    3. 濃度変化による流れ
    4. 強制対流
    5. 自由対流:基礎概念
    6. 断熱温度勾配
    7. 熱機関としての自由対流
    8. 自由対流:境界層型流れ
  14. 成層流
    1. 基礎概念
    2. ブロッキング
    3. 風下波
    4. 内部波
  15. 回転流体中の流れ
    1. はじめに
    2. 遠心力とコリオリ力
    3. 地衡流とテイラー・プラウドマンの定理
    4. テイラー柱
    5. エクマン層
    6. 固有安定性と慣性波
    7. ロスビー波
    8. 回転と成層
    9. 回転同心円筒内の対流
  16. 不安定性
    1. はじめに
    2. 流体柱の表面張力不安定性
    3. ループ内の対流とローレンツ方程式の安定性
    4. 流体力学の線形安定性理論の原理
    5. 回転クウェット流
    6. せん断流の不安定性
    7. 境界層に対する安定性理論
    8. 渦列
  17. せん断流中の乱流遷移
    1. はじめに
    2. 境界層遷移
    3. 管内流れの遷移
    4. 噴流の遷移
  18. 乱流
    1. 乱流運動の性質
    2. 乱流運動の統計的記述
    3. 乱流方程式
    4. 相関の解釈
    5. スペクトル
    6. 乱流中の渦塊
  19. 一様等方性乱流
    1. はじめに
    2. 空間相関と完結問題
    3. スペクトルとエネルギーカスケード
    4. エネルギーカスケードの力学過程
  20. 乱流せん断流
    1. レイノルズ数相似性と自己保存
    2. 間欠性とエントレインメント
    3. 乱流後流
    4. 秩序構造:一般的なものと後流
    5. 壁近くの乱流
    6. 境界層内の秩序構造
    7. 乱流成層流
    8. 逆遷移
  21. 水平層内の対流
    1. はじめに
    2. 対流の開始
    3. 開始直後の対流
    4. レイリー数が増加したときの変化:一般的な注意
    5. 欠陥のない自由対流の変化
    6. 欠陥をもった対流の変化
    7. 高いレイリー数での対流と乱流
  22. 2重拡散対流
    1. はじめに
    2. 塩が引き起こす対流
    3. 温度駆動対流
    4. 層状化
  23. 力学的カオス
    1. はじめに
    2. ローレンツ方程式
    3. 外力が加わった球状振り子のカオス的な運動
    4. カオスに至る道すじ
    5. 流体力学におけるカオス
    6. 乱流に対する関係
    7. 乱流遷移に対する関係
  24. 実験方法
    1. 実験流体力学の一般的な見地
    2. 速度の測定
    3. 圧力と温度の測定
    4. 流れの可視化
    5. 数値実験
  25. 流体力学の応用
    1. はじめに
    2. 雲のパターン
    3. 大気循環の波動
    4. 砂丘の形成と動き
    5. 大陸移動と地球マントルの対流
    6. 太陽の粒状構造
    7. 流出物のまきちらし
    8. 構造物に対する風の影響
    9. 境界層制御:渦発生器
    10. 列車の空気力学
    11. 結晶成長
    12. うねりを利用した泳ぎ方
    13. 人体からの対流
    14. ブーメランの飛行