数値計算は科学技術を支える大きな柱であり,コンピュータによる大規模な数値計算なしには現代の科学技術はありえなかったといっても過言ではない.特に工学に携わる技術者は,代表的な数値計算法がライブラリやソフトウェアの形で提供されている現在においても非常に重要である.なぜなら,数値計算には誤差がつきものであるし,万能の数値計算法は存在しないため,各計算法のもつ特徴を正しく理解しておくことが,使い方を誤らないために必要であるからである.もし,不適切な使い方をすれば,精度が出ない上に計算時間やメモリを多く使ってしまうこともある.また,ちょっとした応用に自分でこまわりの利くプログラム作っておくと重宝することも多い.
このような理由から,わかりやすさを第一にして,実際のプログラムも示されている本としてエクセル土木シリーズ「数値計算入門」を執筆した.この本には VBA によるプログラムが掲載されており,エクセルで実行可能である.幸いにして「数値計算入門」は好評を得ているが,さらにフリーソフトで提供されている実行環れば便利という要望も少なからずいただいた.そこで,本書は「数値計算入門」をもとに,紙面の関係で「数値計算入門」には含めなかった話題を盛り込んで,実行環境としてはエクセルのほかに OpenOffice.org を想定して執筆したものである.なお,OpenOffice.org はオープンソースで開発された統合オフィスソフトで,だれでも無償でコピーして使え,Windows 版のみならず Linux 版や Mac 版もある.また,本書において具体的に追加した内容は,連立1次方程式の解法としてLU分解法,数値積分法としてロンバーグ積分,高速フーリエ変換,常微分方程式の境界値問題,偏微分方程式全般,固有値問題全般等である.したがって,本書によって一応数値計算法の基礎部分は網羅されていると考えている.